能と古注釈書
能と古注釈書
(グローバルCOE研究員 博論成果出版)
著者:神田裕子
【著者略歴】
早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。明治大学法学部兼任講師。
【博論成果出版について】
演劇博物館グローバルCOEでは、若手研究者の学位論文のうち、特に優れた内容のものを選考し、単行本として刊行している。
室町時代、世阿弥によって大成された「能」という演劇の基盤は何であったのか。
能作品を生み出した重要な文学的基盤のひとつである、伊勢物語古注釈書を探ることから、その秘密に迫る。また能の芸能的基盤として重要な、鎌倉中期の歌謡、宴曲(早歌)からも考えていく。近世文化全体を見通したうえで、能を書誌学的調査から新たに捉え直す書。「伝二条為兼筆冷泉家流伊勢物語抄」「謡抄」など初公開資料多数。
実証主義に徹し、新たな「能」の世界を探る。
●金春宗家蔵『宴曲集巻第一』の影印を、全編カラー掲載。
2010年3月15日発行
A5判・312ページ
笠間書院
定価7,200円+税
【目次】
序 神田裕子の学問とその方法 片桐洋一
序
第一章 能の文学的基盤ー伊勢物語古注釈の世界
第一節 伊勢物語注釈書に関する先行研究
第二節 冷泉家流伊勢物語古注の原型
(ⅰ)河野美術館蔵『伊勢物語註冷泉流』と「十巻本伊勢物語注」
(ⅱ)冷泉家流伊勢物語古注の変容と展開--『千金莫伝』、宮内庁書陵部蔵『伊勢物語抄』との関係--
第三節「十巻本伊勢物語注」について--「伝二条為兼筆冷泉家流伊勢物語抄」
【補足資料】「伝二条為兼筆冷泉家流伊勢物語抄」翻刻一覧
第四節 冷泉家流伊勢物語注の末書--「伝心敬筆伊勢物語注」について
(ⅰ)旧注的注釈態度の萌芽--「伝心敬筆伊勢物語注」の引用書物を中心に
(ⅱ)「伝心敬筆伊勢物語注」の成立年代と著者
(ⅲ)冷泉家流伊勢物語古注の末書としての特質--「伝心敬筆伊勢物語注」の引用和歌
第二章 能の注釈書と古典世界
第一節 「謡抄」と古典世界--紹巴注を中心に
(ⅰ)和歌に関する紹巴注
(ⅱ)伊勢物語注釈書に関する紹巴注
第二節 伊勢物語を題材とする能の注釈内容
(ⅰ)『紹巴本伊勢物語付註』と共通する注釈
(ⅱ)「伊勢物語闕疑抄」と共通する注釈
(ⅲ)「謡抄」に引用される「古注」
第三節 古活字「謡抄」守清本の書誌学的研究
(ⅰ)安田文庫蔵本と国会図書館本の照合
(ⅱ)守清本の刊行時期の推定
第四節 古活字「謡抄」単辺十二行本の書誌学的研究
(ⅰ)単辺十二行本の収録曲目と編成
(ⅱ)単辺十二行本の諸版
(ⅲ)守清本と単辺十二行本との関連
第五節 整版「童舞抄」の書誌学的研究--本能寺版古活字本との関連を中心に
(ⅰ)整版本『童舞抄』について
(ⅱ)本能寺版との関連
(ⅲ)江戸初期刊行能楽資料全般における、整版『童舞抄』の位相
第三章 能の芸能的基盤ー宴曲の世界
第一節 宴曲研究史概要
第二節 金春宗家蔵『宴曲集巻第一』をめぐって
(ⅰ)金春宗家本の朱濁点について
(ⅱ)金春宗家本の朱書きについて
(ⅲ)「今春太夫鎮喜」について
第三節 宴曲と天台の秘伝--〈三嶋詣〉の場合
(ⅰ)宴曲〈三嶋詣〉について
(ⅱ)宴曲〈三嶋詣〉と天台の秘伝
第四節 宴曲〈三嶋詣〉に見る古典世界
(ⅰ)和歌について
(ⅱ)仏教関連語について
(ⅲ)日本紀・縁起関連語について
(ⅳ)漢語について
第五節 明治期における宴曲研究
(ⅰ)吉田東伍以前
(ⅱ)吉田東伍の宴曲研究
【補足資料1】吉田文庫蔵宴曲関連資料一覧
【補足資料2】吉田東伍宴曲関連事項年表
《附録》金春宗家蔵『宴曲集巻第一』解題・翻刻・影印
掲載論文初出一覧
図版一覧
あとがき