演劇博物館の社会的役割-ロシアにおける劇場とは-
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開催概要
日時 | 2008年11月17日(月) 16:30~18:30 | ||
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場所 | 早稲田大学大隈記念タワー(26号館)302会議室 | ||
主催 | 西洋演劇研究コース | ||
概要 | 講師:ボリス・リュビーモフ(ロシア国立マールイ劇場付属M.S.シェープキン記念演劇大学学長) 【概要】ロシアには600を超える劇場が存在する。劇場内の回廊を利用して、多くの場合、劇場ゆかりの名優に思いを馳せることができるような演劇博物館が併設されている。その中で演劇資料の質量の点で最大規模を誇るのが、国立中央バフルーシン演劇博物館である。スタッフ数150名を越え、その半数近くが研究者であるという。同館の運営に携わってきた前館長ボリス・リュビーモフ氏に、演劇博物館の社会的役割について、論じていただく。
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詳細情報
【開催報告】演題:『演劇博物館の社会的役割ーロシアにおける劇場とは』
ボリス・リュビーモフ氏は、国立中央バフルーシン演劇博物館の前館長であり、同演劇博物館の経営に長年携わって来られた。その貴重な経験と実績から、演劇博物館が社会において果たすべき役割についてお話いただいた。逐次通訳は上田洋子さん(演劇博物館助手)にお願いした。講演要旨は次のとおりである。
国立中央バフルーシン演劇博物館の創立者であるバフルーシンは、坪内逍遙とほぼ同世代であるが、まだ日本にはほとんど紹介されていない演劇研究者である。バフルーシンは、演劇博物館の創設を思い立ち、当時は価値が認められていなかった演劇に関する資料を収集した。1894年頃よりコレクションの展覧が始められた。バフルーシンは、1913年にそのコレクションをすべてモスクワ市に寄贈し、それが現在の国立中央バフルーシン博物館の基礎になった。演劇博物館が創設されたことにより、形に残らないと思われた上演もまた、何らかの形で後世に残ることができるのだ、という意識が俳優に生まれ、後のロシア演劇のレベルアップに結びついた。また、この博物館では、劇作家や名優、バレエダンサーの生家を博物館の一部として管轄している。それにより、演劇に縁の深い街並みや場所をも再現・保存することに成功している。資料の収集方針は、演劇を総合芸術として捉え、文学や文学史についての貴重な資料なども含めて、文化の全体に寄与することを目指している。
リュビーモフ氏のご講演は、豊富な知識に基づき楽しい逸話を交えて、モスクワに所在する演劇博物館とその街並みを生き生きと浮かびあがらせるものだった。ご講演の後には活発な質疑が行われた。