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2009年度第4回 オペラ/音楽劇の総合的研究プロジェクト

開催概要

日時 2009年8月4日(火) 15:00~17:00
場所 早稲田キャンパス8号館219号室
主催 西洋演劇研究コース オペラ研究会
概要 発表者:白井史人
題目:オペラ《モーゼとアロン》の映像化を巡って:ストローブ=ユイレからシェーンベルクへ

【発表要旨】
シェーンベルクのオペラ《モーゼとアロンMoses und Aron(未完)》と、このオペラを映像化したストローブ=ユイレの映画『モーゼとアロン(1974-1975)』を対象とする。旧約聖書を下敷きにシェーンベルクが脚本と作曲を手掛けたこのオペラは、12音による作曲を探求した1920年代に構想開始、1932年に第2幕までの音楽が創作されたが、彼のアメリカ亡命などによって作曲が中断されたまま第3幕は未完のまま終わった。先行研究においては、音列技法、ユダヤ問題、未完という断片性への着目など様々な観点から取り上げられている。本発表では、このオペラに基づくストローブ=ユイレの映画『モーゼとアロン』の分析を通して、原作オペラに内在する「偶像 (Bild)崇拝の禁止」という問題を、言葉、音響、映像を組み合わせた時間-空間表現の問題と重ねて考察する。そのために、映画『モーゼとアロン』における映像上のつながりを欠いたモンタージュや、声と発話者の映像の関係などをミシェル・シオンの映画の音響分析の概念装置を用いて検討する。そして、ストローブ=ユイレのオペラに対する試みを、虚構の空間性を創出する古典的な「映画化」とは異なる、断片化された一つの一つの映像を提示す
る「映像化」として捉える。さらに、アドルノの《モーゼとアロン》論(「聖なる断片」)を批判したラクー=ラバルトのテクスト(『虚構の音楽--ワーグナーのフィギュール』)を参照しつつ、シェーンベルクにとって「映画」あるいは「映像」とは何だったのか、という問題における本オペラの位置付けを検討したい。

発表者プロフィール:
白井史人(しらい ふみと) 東京大学大学院総合文化研究科、超域文化科学専攻、表象文化論、博士課程1年。オペラ/音楽劇研究会に早稲田大学グローバルCOE(演劇・映像拠点)研究員として参加し、第2次ウィーン楽派から戦後に至る前衛音楽と視覚的要素(特に映画)の関係を巡る事例研究をテーマとし
ている。これまでの研究の中心は修士論文『沈黙と旋律‐‐武満徹の映画の〈音楽〉』(2008年度、東京大学大学院総合文化研究科に提出)。 

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