2009年度第6回 オペラ/音楽劇の総合的研究プロジェクト
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開催概要
日時 | 2009年11月27日(金) 18:30~20:30 | ||
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場所 | 早稲田キャンパス国際会議場4階 共同研究室7 | ||
主催 | 西洋演劇研究コース オペラ研究会、宝塚ゼミ | ||
概要 | 講演タイトル:戦前の西洋舞踊受容と「宝塚歌劇」-楳茂都陸平と岩村和雄の前衛 講師:桑原和美(就実大学人文科学部教授) コーディネーター:山梨牧子(GCOE研究員・オペラ研究会所属「折衷音楽劇としての寶塚」ゼミ) 18:35~ 開式の挨拶:山梨牧子 18:40~ 講演: 20:15 まとめ、質疑応答 20:45 閉会の挨拶:丸本 隆(GCOE事業推進担当者、早稲田大学法学学術院教授)、山梨牧子
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詳細情報
【開催報告】総合芸術である「音楽劇」にとって、メロディを介した身体表現、つまり「舞踊」は大切な要素であるが、相対的な分析が行われる機会は少ない。桑原和美氏の綿密な年譜・資料考証によって舞踊、演劇、音楽、舞台美術など多分野にわたる活発なディスカッションが行われた。西洋のダンスと東洋の舞が融合されるかたちで発達してきた折衷音楽劇としての宝塚を舞踊研究の立場から考察することで、音楽劇の中における舞踊の役割と、東西(特にロシア)との接点においてダンス受容と創作がいかに行われていたかが示された。劇団内の演出家と教師といった役割分担、「振付家」というアイデンティティー、照明を活かした舞台美術など、戦前の宝塚の「前衛」を考えることで、現代の日本の舞踊や音楽劇における実践と研究の双方における課題も示唆された。
【講演要旨】
大正から昭和初期は、西欧の芸術思潮の流入ともに「バレエ・リュス」「ノイエ・タンツ」「ユーリズミックス」といった新しい舞踊芸術や身体文化に対する関心が急速に高まった時代である。帝国劇場が歌劇部を創設し、G.V.ローシーを教師として本格的な西洋演劇の導入に着手し、さらにアンナ・パブロヴァ、サカロフ夫妻、アントニオ・アルヘンティナなど海外の著名な舞踊家が来演すると、舞踊界の改革への機運は一層増していった。そうした中、海外で学んだ舞踊家、振付家を専属とする独自の組織を持ち、最も先進的な演劇・音楽.舞踊を取り入れたオリジナル作品を上演していたのが宝塚歌劇である。今回はその中で、日本の古典舞踊と西洋の近代舞踊(モダンダンス)を融合した「新しい舞踊」の創造を目指した楳茂都陸平と、ダルクローズ学校でリトミックやバレエを学び、メカニックな動きや直線的な軌跡を用いた「構成派バレー」を発表した岩村和雄の前衛的な舞踊を通して、近代日本の演劇・舞踊における宝塚の意義について考える。
【講師プロフィール】
桑原和美(くわはら・かずみ)
就実大学人文科学部教授。お茶の水女子大学大学院修士(舞踊教育学)、英国サリー大学大学院修士(舞踊学)。専門は舞踊学、特に大正期以後の近代舞踊(モダンダンス)について研究している。