2010年度第2回 オペラ/音楽劇の総合的研究プロジェクト
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開催概要
日時 | 2010年5月25日(火) 18:15~20:45 |
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場所 | 早稲田キャンパス8号館405教室 |
主催 | 西洋演劇研究コース オペラ研究会 |
概要 | タイトル:大正期浅草とイタリア・オペラ─東京オペラ座『椿姫』上演を中心に─ 発表者:中野正昭(グローバルCOE研究生、演劇博物館客員研究員) 【無料、予約不要】 [内容] 大正期に大衆的な西洋音楽受容として人気を得た浅草オペラは、一般的にオペレッタ 上演が中心だったとされる。そこには浅草オペラが上演された建物が「劇場」ではな く「観物場」という一種の見世物だったことからの法的規制、演者の技能的限界、浅 草という庶民的盛り場の嗜好に応じた興行の必要など様々な問題があった。こうした 問題を抱えながらも、石井漠、沢モリノら帝国劇場歌劇部第一期生を中心に組織され た東京オペラ座は、他の浅草オペラ団に協力を求め、グランド・オペラの合同公演を 幾つか試みた。それは時にオリジナルから遠く離れた作品となったが、西洋直輸入の オペラとは異なる日本独自の近代的オペラ上演としての意義を認めることが出来るだ ろう。本発表では、本年度オペラ研究会のテーマである「イタリア・オペラ」に従い、 浅草オペラの代表劇団である東京オペラ座の『椿姫』上演(大正8年[1919]11月・ 浅草日本館、大正10年[1921]6月・京都明治座及び兵庫聚楽座、若松美鳥翻訳)を中心 に、大正期の大衆的な演目としてのイタリアのグランド・オペラ上演の試みと観客受 容を考察する。 [発表者プロフィール] 明治大学大学院博士後期課程(演劇学専攻)単位取得退学後、早稲田大学演劇博物館 助手(日本近現代演劇担当)を経て、現在同客員研究員。明治大学ほか非常勤講師。 専門は、浅草オペラやミュージカル・レヴューを中心とした大正~昭和期の大衆文化、 モダニズム演劇。企画展『古川ロッパとレヴュー時代─モダン都市の歌・ダンス・ 笑い─』『坂本万七新劇写真』(以上演博)、論文「歌劇『椿姫』検閲台本にみる 浅草オペラの演劇性」(G-COE紀要「演劇映像学2008」)「天勝舞台の歌劇性」 (「彷書月刊」2009年2月号)、CD『古川ロッパ傑作集』(ニーチタイム)解説 ほか。 |
詳細情報
【開催報告】本発表では、浅草オペラにおける主なイタリア・オペラについて、演目、上演形態、劇場の規制、演者の技能、観客の趣向と盛場としての興行様態などの観点からの考察がなされた。中でも、石井漠、沢モリノら帝国劇場歌劇部第一期生を中心に組織され、他の浅草オペラ団に協力を求め、グランド・オペラの合同公演を幾つか試みた東京オペラ座が議論の中心となった。翻訳上演には、西洋直輸入のオペラとは異なる日本独自の近代的オペラ上演としての意義を認めることが出来る。この浅草オペラの代表劇団である東京オペラ座の拠点となった日本館をはじめ、浅草の見世物小屋は警察庁の取締りのもと「観物場」と呼ばれ、「劇場」とは区別された。大正期の大衆的な演目としてのイタリアのグランド・オペラ上演の試みと観客受容を考察すると、その内容は芝居のドラマ性(ヴェルディ作『椿姫』)や音楽の親しみやすさ(ロッシーニ作『セリビアの理髪師』)で人気を得たと推測され、「イタリア・オペラ」をどこまで意識的に受容したかの問題についても議論が展開された。
質疑応答では、浅草オペラ、劇場の構造や興行形態についての議論がなされた。舞台や楽団の位置、料金、楽器の調達に関してなど疑問点も多い「浅草オペラ」は、今後の研究が期待される。