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2010年度第4回 オペラ/音楽劇の総合的研究プロジェクト

開催概要

日時 2010年6月23日(水) 18:15~20:45
場所 早稲田キャンパス8号館4階405教室
主催 西洋演劇研究コース オペラ研究会
概要 タイトル:共同研究発表「1910~20年代のオペラの諸相」

発表者:岡本佳子、白井史人、中村仁


【無料、予約不要】

発表1:バルトーク《青ひげ公の城》における象徴主義の影響
発表者:岡本佳子

バルトーク作曲、バラージュ原作のオペラ《青ひげ公の城》(1911)を取り上げ、
象徴主義からの影響について考察する。本作品は他の同時代作品と比較して劇的
効果に乏しい作品であるが、その代わりに際立っているのが、テクストであるハ
ンガリー語の韻文詩とバルトークによる音楽の関係である。本発表では、創作背
景として当時のハンガリーにおける象徴主義受容を踏まえつつ、劇進行に重要な
「血」の言葉とそれに付された音楽が、相互に「血」以外のイメージを喚起して
いく様子を明らかにする。これによって、ハンガリー・オペラという「自国語
オペラ」における、テクストと音楽の相互作用について考えていきたい。

発表者プロフィール:
岡本佳子(おかもとよしこ)
東京大学大学院表象文化論コース博士課程在籍。
2010年度早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究生(西洋演劇コース)。
ハンガリー文化センター勤務。


発表2:クルト・ヴァイル≪プロタゴニスト≫における「舞台の音楽」と
「ピットの音楽」
発表者:中村 仁

20世紀ドイツの作曲家クルト・ヴァイル(1900‐1950)の初めてのオペラ作品である
≪プロタゴニスト≫(1926)は、劇作家ゲオルク・カイザーの同名の戯曲をもとに作曲
され、大きな成功を収めた。巡回劇団の劇団長が劇を演じる中で虚構と現実の区別が
つかなくなり、近親相姦的な恋愛対象であった実の妹を刺殺してしまうこの悲劇では、

8人の管楽器奏者が舞台上に登場し、劇中、パントマイムの伴奏のために大公より派遣
された音楽家として演奏するのであるが、パントマイム以外の部分で奏者達はピット
のオーケストラと共に演奏し、最後にピットに歩いて戻るよう指示されている。
ヴァーグナーがバイロイト祝祭劇場においてオーケストラの存在を聴衆の視界から追
い払ったことが一つの極点を示しているように、「オペラ」というジャンルにおいて
は、劇中に台詞が歌われ、オーケストラによる音楽が鳴っていることの持つ不自然さ
は隠蔽される。しかしヴァイルは音楽(家)の存在を可視化し、舞台とピットの境界
をあやふやにすることで、ドラマにおいて音楽が存在していることの不自然さを強調
する。師のブゾーニのオペラ論や、同時代の様々な新しいオペラや音楽劇の創作との
関係の中で、この作品が「オペラ」というジャンルにおける舞台表象に対して投げか
けていた問題を明らかにさせたい。

発表者プロフィール:
中村仁(なかむら じん)
2010年度早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究生、リサーチ・アシスタント。
桜美林大学、お茶の水女子大学非常勤講師。研究テーマは20世紀前半のドイツの音楽
およびオペラ。主な論文に、『ヒンデミット《行きと帰り》における「逆行」に
ついての考察』(『演劇映像学2009』)、『社会の中のオペラクシェネク《ジョニーは
演奏する》におけるアメリカニズム、黒人および「社会を形成する力」』
(『演劇映像学2008』)。


発表3:シェーンベルク《今日から明日へ》における12音技法とテクストとの関係
発表者:白井史人

概要:本発表では、シェーンベルク作曲の一幕オペラ《今日から明日へ》(1928/29)
(台本・ゲルトルート・シェーンベルク)を取り上げる。シェーンベルクが「オペラ」

という名のもとに完成し発表した唯一の作品となる本作品は、20年代に隆盛を極めた
時事オペラに対する彼の反応であると同時に、12音技法を作品全体に用いた舞台作品
としての歴史的意義を持っている。先行研究では公開当時のアドルノの批評から草稿
研究を含むデヴィッドソンの音列分析(1992)に至るまで、極めて通俗的な夫婦間の
危機を描くテクストの内容と、12音技法による音列(あるいは音列の内部のグループ)

の関係を用いて構造化された音楽との対比的側面が強調されてきた。
本発表は、こうした成果を踏まえつつ、散文によるテクストと音列との結合法に着目
した分析を行い、「テクストとの関係」などに端的に記述されるシェーンベルクの歌
曲創作におけるテクストと音楽との関係の12音技法導入に伴う変化を見極めることで、
本作品のシェーンベルクの舞台作品創作史の中での位置付けを検討する。

発表者プロフィール:
白井史人(しらいふみと)
東京大学大学院表象文化論コース博士課程在籍。日本学術振興会特別研究員
(DC2)、2010年度早稲田大学グローバルCOE研究生(西洋演劇コース)。
「スクリーンの余白から――武満徹《3つの映画音楽》(1995)」(『フィルハーモニー82』、2010年)、
口頭発表「音楽付きドラマ《幸福な手》の視覚的演出――シェーンベルクの1910~20年
代の舞台作品と映画」(表象文化論学会第4回研究発表集会、2009年)ほか。

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