2008年度活動報告
Ⅰ.概要
東洋演劇研究コースでは、2008 年度より教育活動の一環として、研究員の研究成果報告の場となる共同ゼミを開設すると同時に、海外を含む学内外の演劇及びその隣接分野における専門家を講師として招聘する特別講義を全5 回開催した。また研究活動に関しては、近現代部門と古典部門が各々の研究テーマに沿った研究に着手し、それぞれ研究会を開催した。各部門における今年度の研究テーマは以下の通りである。
【近現代部門】
(1)清末演劇史研究:21 世紀COE 以来の文明戯研究を継続
(2)中国におけるスタニスラフスキー・システム導入に関する研究
(3)革命現代京劇に関する研究
【古典部門】
(1)清朝嘉慶年間以降の「弾詞」の出版、発禁、小説化及び演劇との関係についての研究
(2)江戸~明治期の日本における中国古典戯曲の受容に関する研究
先述のように、今年度から近現代部門と古典部門との共同で、コース所属研究員の博士論文の構成と進捗状況、及び最新の研究成果を発表する場として共同ゼミをスタートした。2008 年度は全5 回のゼミにおいて研究助手と研究員の計8名が発表を行っている。近現代部門では清末演劇史研究に関し、21 世紀COE の主催により2007 年2月に開催された春柳社百年記念国際シンポジウムの論文集『文明戯研究の現在』を刊行した。研究テーマの2 と3 については、第1 回スタニスラフスキー・システム受容史研究会、および2008 年5 月に革命現代京劇に関する特別講義を行っている。古典部門では江戸~明治期の日本における中国古典戯曲の受容に関する研究として、2008 年11 月から12 月にかけ中国中山大学の黄仕忠教授を招聘、早稲田大学中央図書館を中心に日本における中国古典戯曲関連書籍の所蔵状況を共同調査するとともに、その研究成果の一部をコース主催の後期定例研究会において発表した。
〈事業推進担当者〉
平林宣和 早稲田大学政治経済学術院准教授
岡崎由美 早稲田大学文学学術院教授
〈客員教員〉
瀬戸宏 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師、摂南大学教授
細井尚子 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師、立教大学教授
〈研究助手〉
森平崇文 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手
Ⅱ.コース活動報告
1.共同ゼミ
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
第1 回(2008 年4 月18 日(金)17:30 ~ 19:00)
事業推進担当者より共同ゼミ開催の趣旨説明があり、次回以降の発表者を決定した。
第2 回(2008 年5 月31 日(土)14:00 ~ 17:00)
発表者:
伴俊典(演劇博物館助手・GCOE 研究員)
「明代万暦期出版の選集に収録される故事の状況および演劇作品との関係」
森平崇文(GCOE 研究助手)
「独脚戯から見た上海―王无能とその作品を中心に」
第3 回(2008 年6 月28 日(土)13:00 ~ 15:00)
発表者:
原田信(GCOE 研究員・早大院)「図像に見える八仙の変化について」
大江千晶(GCOE 研究員・一橋大院)「日本統治期大連の早期新劇活動」
第4 回(2008 年10 月4 日(土)14:00 ~ 16:00)
発表者:
李宛儒(GCOE 研究員・名古屋大院)
「皇民化運動期における台湾職業演劇の改造―《禁鼓楽》から《台湾演劇協会》の発足まで」
辻周吾(GCOE 研究員・京都外大院)
「中国現代話劇における言語表現についての研究―中国話劇におけるモノローグの特徴をめぐって」
第5 回(2008 年11 月8 日(土)14:00 ~ 16:00)
発表者:
波多野眞矢(GCOE 研究員・中央大院)「魯迅、胡適の京劇観」
赤木夏子(GCOE 研究員・東大院)「1950 年代の京劇改革」
2.特別講義
「建国後の革命史を題材にした話劇と“様板戯”」
講師:劉平(中国社会科学院文学研究所研究員)
日時:2008 年5 月17 日(土)14:00 ~ 17:00
会場:早稲田キャンパス6 号館314 室
「劇場運営、文献研究とフィールドワーク―演劇研究方法論」
講師:邱坤良(台北芸術大学教授)
日時:2008 年6 月28 日(土)15:20 ~ 17:20
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
「相声概論」
講師:大野香織(早稲田大学非常勤講師)
日時:2008 年10 月4 日(土)16:20 ~ 17:50
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
「影戯院という「場」―民国期上海映画環境の形成と移民社会」
講師:白井啓介(文教大学教授)
日時:2008 年11 月8 日(土)16:20 ~ 17:50
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
「湯顕祖の劇作と劇評における情・理・勢」
講師:王璦玲(中央研究院中国文哲研究所副所長)
日時:2009 年2 月28 日(土)15:00 ~ 17:00
会場:早稲田キャンパス国際会議場共同研究室6
3.定例研究会
〈前期定例研究会〉
日時:2008 年7 月26 日(土)14:00 ~ 17:20
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
発表者:清水拓野(GCOE 研究協力者)
「観光資源としての俳優教育の魅力とその可能性―陝西省西安市の二つの事例から」
コメンテーター:田村容子(福井大学専任講師・GCOE 研究協力者)
発表者:邵迎建(徳島大学教授)
「日中戦争期上海の話劇―『文天祥』をめぐって」
コメンテーター:森平崇文(GCOE 研究助手)
〈後期定例研究会〉
日時:2008 年12 月13 日(土)14:00 ~ 16:50
会場:京都大学人文科学研究所本館第一セミナー室
発表者:黄仕忠(中山大学中国古文献研究所所長)
「森槐南、幸田露伴、笹川臨風から王国維まで―明治期の中国演劇研究」
鼎談「明治期の中国演劇研究をめぐって」
:黄仕忠、金文京(京都大学人文科学研究所所長)、岡崎由美(事業推進担当者)
4.第1 回スタニスラフスキー・システム受容史研究会
日時:2009 年1 月10 日(土)14:00 ~ 16:30
会場:早稲田キャンパス26 号館301 室
発表者:瀬戸宏(GCOE 客員講師・摂南大学教授)
「陳世雄『三角対話』紹介―中国スタニスラフスキー・システム受容史概説」
5.刊行物
飯塚容・瀬戸宏・平林宣和・松浦恆雄編著
『文明戯研究の現在―春柳社百年記念国際シンポジウム論文集』東方書店、2009 年
本書は中国話劇100 周年を記念して2007 年2 月3 ~ 4 日の間、早稲田大学21 世紀COE プログラムにより催された、春柳社並びに文明戯に関する国際シンポジウムにおける日中10 名の研究者の発表論文と、コース内の研究協力者・研究員3 名の論文から成る論文集である。東洋演劇研究コースから、事業推進担当者・客員講師・研究協力者・研究員の9 名が編集・執筆・翻訳をそれぞれ担当した。