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2009年度活動報告

Ⅰ.概要

東洋演劇研究コースでは、教育活動の一環として2008 年度より研究生の研究成果報告の場となる共同ゼミを開設している。2009 年度においても各研究生の研究進歩状況の報告及び研究指導の場として前後期計5 回の共同ゼミを行い、そのうち第4 回は海外のシンポジウムに参加する複数の研究生のプレ発表会とした。また共同ゼミと並行して、特別講義、国際研究集会などの会合を開き、研究生が学内外、国内外の様々な世代の研究者と交流する機会を複数設けている。また研究活動に関しては、古典部門と近現代部門との連続性への模索を視野に入れつつ、昨年度までの成果に基づき各々の課題に沿って研究活動を展開した。各部門における2009 年度当初の研究テーマ及び計画は以下の通りである。


【近現代部門】
(1)2006 年度に開催した春柳社百年記念国際シンポジウムの発展企画として、中国広州の華南師範大学で中国側研究者とともに国際研究集会を開催。
(2)2008 年度より開始した中国におけるスタニスラフキーシステム受容史研究を更に展開。
(3)京劇史研究班を組織、革命模範劇その他これまでの研究の蓄積を活かしつつ、20 世紀の京劇史研究を進展させる。

【古典部門】
(1)近代における禁書禁演令と演劇芸能の流通・変革についての研究
(2)演劇芸能の読み物化と上演・出版の環境に関する研究
(3)江戸~明治期の日本における中国古典戯曲の受容に関する研究



■担当者
<事業推進担当者>
平林宣和  早稲田大学政治経済学術院准教授
岡崎由美  早稲田大学文学学術院教授


<客員教員>
瀬戸宏   早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師、摂南大学教授
細井直子  早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師(2009 年度まで)、立教大学教授
森平崇文  早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員次席研究員 (2010 年度より)


<研究助手>
森平崇文  早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手(2009 年度まで)
李宛儒    早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手(2010 年度より)




Ⅱ.コース活動報告
■共同ゼミ(会場はすべて早稲田キャンパス6 号館318 室)
第1 回共同ゼミ
日時:2009 年4 月18 日(土)16:00 ~ 18:00
発表者:陳凌虹(GCOE 研究生・総合研究大学大学院)
    「 『椿姫』『茶花女』『新茶花』―日中における演劇『椿姫』の上演とその意味」
    呉孟晋(GCOE 研究生・東京大学大学院)
    「民国期における画家による演劇への関与について」
第2 回共同ゼミ
日時:2009 年5 月16 日(土)13:30 ~ 15:30
発表者:黄綿文(GCOE 研究生・一橋大学大学院)
    「越劇と黄梅戯におけるジェンダー」
    魏名婕(GCOE 研究生)
    「<The Bondman>上演について―ロンドン、東京そして上海」
第3 回共同ゼミ
日時:2009 年10 月3 日(土)16:50 ~ 17:50
発表者:橘千早(GCOE 研究生)
    「 講経文の上演に関する一考察― P.2418《仏説父母恩重経講経文》の分析を中心に」
第4 回共同ゼミ
日時:2009 年11 月14 日(土)14:00 ~ 18:00
発表者:大江千晶(GCOE 研究生・一橋大学大学院)
    「 1920 年代東北劇壇における文明戯公演の実態と影響― 1925 年歐陽予倩の大連・奉天公演を例に」
    陳凌虹(GCOE 研究生・総合研究大学院大学大学院)
    「 「女形」と「男旦」―新派と文明戯を中心に」
     李 宛儒(GCOE 研究生・名古屋大学大学院)
    「 日本統治時期台湾における新式演劇の興起と発展―知識人の新劇活動と作品を中心に」
     鈴木 直子(GCOE 研究生・早稲田大学演劇博物館助手)
    「 五四時期の北方の学生演劇」
     波多野 眞矢(GCOE 研究生・中央大学大学院)
    「 20 世紀初頭の北京における日本人劇通について」

第5 回共同ゼミ
日時:2010 年3 月2 日(土)15:00 ~ 16:00
発表者:稲澤夕子(GCOE 研究生・京都大学非常勤)
    「清代芸能における「江湖」―車王府曲本を中心に―」

■特別講義
「20 世紀初頭における“閨秀文芸”の変遷―女性弾詞小説を例に」
講師:胡暁真(台湾中央研究院文史哲研究所)
日時:2009 年5 月16 日(土)15:50 ~ 17:50
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
「中国におけるスタニスラフスキー・システム」
講師:胡星亮(南京大学影戯研究所)
「中国現代戯劇の文化的特徴(1949 ~ 2000)」
講師:董健(南京大学影戯研究所)
日時:2009 年7 月25 日(土)14:00 ~ 17:30
会場:早稲田キャンパス26 号館(大隈記念タワー)302 室

「明治期日本の中国演劇研究が王国維に与えた影響」
講師:黄仕忠(中山大学中国古文献研究所所長・教授)
日時:2009 年12 月10 日(木)13:00 ~ 15:00
会場:戸山キャンパス39 号館中文研究室

「上海話劇の現状」
講師:喩栄軍(脚本家・上海話劇芸術センター)
講師紹介:飯塚容(中央大学教授・GCOE 研究協力者)
コメンテーター:中尾薫(演劇博物館助手・GCOE 研究生)
日時:2009 年12 月24 日(木)14:00 ~ 16:00
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室

「中国郷村における演劇の発生―徽州の儺戯・目連戯を中心とする考察」
講師:田仲一成(東洋文庫研究員・日本学士院会員・東京大学名誉教授)
日時:2010 年2 月6 日(土)15:00 ~ 17:00
会場:早稲田キャンパス26 号館(大隈記念タワー)302 室

「中国における曲芸研究―歴史と現状」
講師:呉文科(中国芸術研究院曲芸研究所所長・中国曲芸家協会副主席)
日時:2010 年3 月2 日(土)16:00 ~ 18:00
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室


■スタニスラフスキ-・システム受容史研究会
第2 回 陳世雄『三角対話』(厦門大学出版社、2003 年)読書会
日時:2009 年4 月18 日(土)13:30 ~ 15:00
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
発表者:辻周吾(GCOE 研究生・京都外大大学院)・森平崇文(GCOE 研究助手)
閲読『三角対話』第5 章・総合討論
第3 回 陳世雄『三角対話』読書会
日時:2009 年10 月3 日(土)15:00 ~ 16:30
会場:早稲田キャンパス6 号館318 室
発表者: 鈴木直子(演劇博物館助手)・大江千晶(GCOE 研究生・一橋大学大学院)
閲読『三角対話』第6 章・総合討論


■国際研究集会(演劇講座及び国際シンポジウム)
グローバルCOE 演劇講座「上海演劇の精華」(上海市文化芸術擋案館との共催)
日時:2009 年6 月1 日(月)14:45 ~ 18:00
会場:早稲田キャンパス小野記念講堂
講師:羅懐臻(脚本家・上海市脚本創作センター)
   「中国演劇における「海派精神」―上海演劇百年の回顧」
   金静(越劇女優・戚派継承者・上海静安越劇団)
   「戚派芸術と越劇の魅力」
   陳少雲(京劇俳優・麒派継承者・上海京劇院)
   「麒派芸術と中国演劇の魅力」

国際ラウンドテーブル「上海都市空間の中の演劇・映像」
日時:2009 年6 月6 日(土)10:00 ~ 17:20
会場:早稲田キャンパス26 号館(大隈記念タワー)302 室
第1 部「1940 年代を中心に」/ 問題提起:羅蘇文(上海社会科学院)
パネリスト: 姜進(華東師範大学)、連玲玲(台湾中央研究院)、邵迎建(徳島大学)、張新民(大阪市立大学)、白井啓介(文教大学)、藤野真子(関西学院大学)、三須祐介(広島経済大学)、高橋俊(高知大学)、司会兼務:森平崇文(GCOE 研究助手)
第2 部「1950 年代を中心に」/ 問題提起:姜進(華東師範大学)
パネリスト: 羅蘇文(上海社会科学院)、連玲玲(台湾中央研究院)、邵迎建(徳島大学)、張新民(大阪市立大学)、佐治俊彦(和光大学)、村井寛志(神奈川大学)、阿部範之(同志社大学)、森平崇文(GCOE 研究助手)
司会兼務:平林宣和(GCOE 事業推進担当者/ 早稲田大学政治経済学術院准教授)
第3 部「総合討論」
司会:岡崎由美(GCOE 事業推進担当者/ 早稲田大学文学研究科教授)

「清末民初新潮演劇」国際シンポジウム(華南師範大学との共催)
日時:2009 年12 月26 ~ 27 日
会場:中国広州華南師範大学
概要:今回のシンポジウムは21 世紀COE プログラムの時期に開催された「春柳社百年記念シンポジウム」(2007 年2 月)の発展企画として、中国広州の華南師範大学との共催で開催された。清末民初新潮演劇とは、華南師範大学の袁国興教授によって提示された概念であり、大よそ1900 ~ 1920 年頃の中国で生じた旧来の演劇の改良、あるいは新たな演劇スタイルの出現といった種々の潮流を指す。この時期の演劇に関する資料調査やそれを土台とした研究はここ二十年ほどで大きな進展がみられ、今回のシンポジウムにおいても中国、日本、台湾、シンガポール、韓国など各国各地域の研究者よって多くの研究成果が発表された。東洋演劇研究コースからは平林宣和、瀬戸宏、飯塚容、松浦恒雄、鈴木直子、波多野眞矢、大江千晶、陳凌虹、李宛儒と向陽の計10 名が報告を行っている。


■刊行物
章詒和著、平林宣和、森平崇文、波多野眞矢、赤木夏子訳
『二十世紀の京劇俳優』青弓社2010 年3 月
本書は章詒和『伶人往事―写給不看戯的人看』(2006)の全訳である。8 人の京劇俳優をめぐる8 本の文章から成り、東洋演劇研究コース内に設けられた京劇史研究班のメンバーによって各章の翻訳および用語解説の作成が行われた。翻訳および執筆担当者は以下の通りである。
  序文・言慧珠・葉盛長―波多野眞矢(グローバルCOE 研究生)
  尚小雲・程硯秋―赤木夏子(グローバルCOE 研究生)
  楊宝忠・葉盛蘭・奚嘯伯―森平崇文(グローバルCOE 研究助手)
  馬連良・あとがき―平林宣和(グローバルCOE 事業推進担当者)
  用語解説作成―森平崇文・赤木夏子

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