2007年度活動報告
Ⅰ.概要映像研究を国際的視野によって促進するというグローバルCOE の目標に従って、初年度の活動においては国内外における学生の指導、研究のための資料収集、国際シンポジウムの開催という三本の柱を中心とした。
■担当者
<事業推進担当者>
小松弘 早稲田大学文学学術院教授
武田潔 早稲田大学文学学術院教授
十重田裕一 早稲田大学文学学術院教授
長谷正人 早稲田大学文学学術院教授
藤井仁子 早稲田大学文学学術院専任講師
<客員研究助手>
後藤大輔 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員研究助手
Ⅱ.プロジェクト別活動報告
学生の指導に関しては、早稲田大学における映画研究を拠点として、国内における大学院学生はもとより、諸外国において日本の映画研究に関心を持つ大学院学生をイタリア、ポルデノーネ市で10 月に開催された無声映画祭のコレジアムにおいて指導した。その成果は指導学生一名が文部科学省留学生に選ばれたことに現れている。資料収集に関しては、映像研究コースのプロジェクトに即して、基本的には映画史研究のための一次資料を中心としている。高額資料として、帝政ロシア映画研究のためのマイクロフィッシュを、またアメリカ映画研究のためのマイクロフィルムを購入した。中国映画研究のために初期中国映画の資料を調査するという試みも行なわれた。文革のために散逸の著しい初期中国映画の資料ではあるが、映像コースでは上海図書館を中心として20 世紀の初頭の外国語新聞を調査中である。目下フランス語新聞を調査しているが、従来の研究では全く言及されていなかったいくつかのデータがこの調査によって得られつつある。ただ、資料の複写コピーが許可されないため、手書きで調査が行なわれている状況にある。この理由によって、成果が現れてくるには今しばらくの時間がかかるであろう。資料収集のいまひとつの側面として、映像資料の収集がある。これは一方では各国の映画アーカイヴの協力もあり、順調に収集できているが、他方で、映像研究コースの独自調査で発掘するという面では困難がともなっている。しかし海外の古物市場、個人コレクターなどとの接触によって、ユニークな映像資料が収集されつつある。多くの場合断片ではあるが、それでも歴史的に貴重であり、教育目的での使用価値は計り知れないほど大きい。問題点としては可燃性フィルムで発見された資料をどのように保存するかということがある。フィルムの復元にはかなりの費用がかかる。35 ミリフィルムでの保存が望ましいが、費用面を考慮すると、16 ミリフィルムでの保存あるいはDVD などの他の媒体への変換もやむをえない。
国際シンポジウムの開催に関しては、準備期間が短かったにもかかわらず、海外の研究者の協力もあり、実現でき、かなりよい成果を挙げることが出来た。演劇と映画に関するこのシンポジウムの主題の歴史は古く、だが新しい様々な問題を含んでいる。今回はそこにある基本的な問題点を明らかにできた。その成果は今後の映画史研究の基礎資料として使われることになろう。