2010年度活動報告
Ⅰ.概要映像研究コースでは、舞踊研究と映画研究、演劇研究と映画研究の融合、また国際的研究交流を進めるため、2010 年度は舞踊研究コースとの共同研究会、映像研究コースリーダーである小松弘教授企画による2011 年1 月17 日・18 日・19 日に開催された国際シンポジウム「映画と演劇におけるピクチャレスク」に向けての研究会などを開催した。また2008 年初頭より日本演劇コースと映像研究コースが共同で進めてきた「文楽フィルム・プロジェクト」の報告書「還ってきた文楽フィルム『日本の人形劇―人形浄瑠璃』研究報告」(内山美樹子監修、武田潔編、早稲田大学演劇博物館グローバルCOE プログラム、2011 年3 月)を日仏2 カ国語版として刊行した。2011 年度はグローバルCOE の最後の年である。国際的研究者育成を図るため映画史、映画理論、テレビドラマに関する多彩なプロジェクトによってこれまで行われてきた研究活動の成果を積極的に公開していく。
■担当者
〈事業推進担当者〉
小松弘 早稲田大学文学学術院教授
武田潔 早稲田大学文学学術院教授
岡室美奈子 早稲田大学文学学術院教授
十重田裕一 早稲田大学文学学術院教授
長谷正人 早稲田大学文学学術院教授
藤井仁子 早稲田大学文学学術院准教授
〈研究助手〉
大傍正規 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手
山本律 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手
Ⅱ.研究報告
(1) 第一回バレエ研究会
日時:2010 年6 月5 日(土)15:00 ~ 17:00
場所:早稲田キャンパス6 号館318 教室
主催:舞踊研究コース/映像研究コース
題目:「バレエ―初期映画史再考のためのもう一つの挑戦」
講師:小松弘(GCOE 事業推進担当者/早稲田大学教授)
〔開催報告〕
「バレエ―初期映画史再考のためのもう一つの挑戦」と題した講演が小松弘教授によって行われた。初期映画史におけるダンサー/ダンサー的登場人物の意義が、映画というメディアの特性と当時の観客の受容、また実際の映像の紹介などから多角的に明らかにされた。また、映画スター誕生以前の初期映画におけるダンサーの存在を、スター的存在の映画への輸入であることを示唆しながら、あまり見ることができないアンナ・パヴロワが踊っている映像、一昨年発見されたタマラ・カルサヴィナが踊っている映像を紹介した。鈴木晶教授による解説も行われ、舞踊研究と映像研究の共同による新たな研究の可能性が垣間見られた会となった。
(2) 映画史研究コース研究会
日時:2010 年7 月28 日(水)16:00 ~ 18:00
場所:戸山キャンパス31 号館310 教室
主催:映像研究コース
題目・発表者:
「改変されたメロディ―日独合作映画『新しき土』の映画音楽に見る山田耕筰の理想と現実」(GCOE 研究助手:大傍正規)
「一九一〇年代の演技形式―女形俳優と初期女優をめぐって―」(GCOE 研究生、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程演劇映像学コース博士後期課程、日本学術振興会特別研究員DC1:小川佐和子)
〔開催報告〕
「改変されたメロディ―日独合作映画『新しき土』の映画音楽に見る山田耕筰の理想と現実」と題した研究発表が大傍正規研究助手によって行われた。明治新政府の樹立前後に開始された洋楽の導入以来、その普及に大きく貢献したのが、無声映画の伴奏音楽や、1911 年に開場された「帝国劇場」の存在である。山田耕筰は1914 年に同劇場で日本最初の交響楽演奏会を開催するなど、日本における交響楽運動の礎石を築いた人物であり、映画館「邦楽座」において無声映画伴奏を担当した人物でもある。今回は、こうした山田の経歴を映画史的にたどり直すと共に、ソヴィエトのトーキー理論を通じて獲得された山田の映画音楽に対する理想と、日独合作映画『新しき土』(1937)の製作過程において山田が直面した現実との軋轢を検討することを通じて、洋楽の推進者たる山田耕筰の日本映画音楽史における功績が明らかにされた。
また小川佐和子研究生により「一九一〇年代の演技形式―女形俳優と初期女優をめぐって―」と題した研究発表が行われた。一九一〇年代は、ドイツではアスタ・ニールセン、フランスではジョゼット・アンドリオ、ロシアではヴェラ・カラーリ、イタリアでは多くのディーヴァ女優たち、というように、女優が各国独自の演技形式を確立していった重要な年代である。そのなかで日本映画は中国映画と並び、女形俳優、すなわち男性が女性を演じるという、映画史においてはきわめて特殊な慣習を持っていた。ただし、女形俳優は「女性性」をコード化した演技形式という点では、とりわけディーヴァ女優と共通する面もある。今回は、日本映画における女形俳優を体系的に整理した上で、女形俳優から女優への演技形式の移行について、身体演技から表情演技という点より発表が行われた。また後半では、小川氏が参加した「第6 回女性と無声映画」学会の報告が行われた。
(3) 国際シンポジウム「映画と演劇におけるピクチャレスク」に向けて(1)
日時:2010 年9 月24 日(土)15:00 ~ 17:00
場所:戸山キャンパス31 号館310 教室
主催:映像研究コース
講師:小松弘(GCOE 事業推進担当者/早稲田大学教授)
〔開催報告〕
本年度GCOE 全体企画国際研究集会として2011 年1 月に開催された「映画と演劇におけるピクチャレスク」のための予備的研究会として、小松弘教授(GCOE 事業推進担当者)より、ピクチャレスクについてお話いただいた。また参加者全員により、ピクチャレスクという概念をどう捉えればよいか、この概念を中心に据えることによって映画と舞台あるいは広義のパフォーミング・アーツがどのような観点から理解できるのかに関しての討議が行われた。
(4) 国際シンポジウム「映画と演劇におけるピクチャレスク」に向けて(2)
日時:2010 年10 月23 日(土)15:00 ~ 18:00
場所:戸山キャンパス31 号館313 教室
主催:映像研究コース
題目:「リュック・ヴァンシェリ著『Cinéma et Peinture』をめぐって」
報告者: 小川佐和子(GCOE 研究生、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課
程演劇映像学コース博士後期課程、日本学術振興会特別研究員DC1)
〔開催報告〕
本研究会は、本年度GCOE 全体企画国際研究集会として2011 年1 月に開催された「映画と演劇におけるピクチャレスク」のための予備的研究会である。発表予定の研究生による研究報告を中心に、ピクチャレスクについての参加者全員による討議が行われた。