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2008年度活動報告

Ⅰ.概要
日本演劇研究コースは、事業推進担当者四名が、能楽(竹本幹夫)、人形浄瑠璃(内山美樹子)、近世演劇および民俗芸能(和田修)、日独比較演劇(ギュンター・ツォーベル)に関わる研究事業を推進している。日本の近現代演劇については、西洋演劇・東洋演劇・芸術文化環境の諸分野との共同研究を行っている。それぞれの研究プロジェクトで、適宜に客員教員の協力を仰ぎ、調査研究とグローバルCOE 研究員の研究指導を行っている。


■担当者
〈事業推進担当者〉
竹本幹夫 早稲田大学文学学術院教授
内山美樹子 早稲田大学文学学術院教授
ギュンター・ツォーベル 早稲田大学政治経済学術院教授
和田修 早稲田大学文学学術院准教授

〈客員教員〉
飯島満 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師、東京文化財研究所主任研究員
川口節子 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師
桜井弘 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師
平林一成 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師
古井戸秀夫 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員教授、東京大学教授
李墨 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員講師
金子健 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 客員次席研究員

〈研究助手〉
埋忠美沙 早稲田大学演劇博物館グローバルCOE 研究助手


Ⅱ.プロジェクト別活動報告

 1 能楽(竹本幹夫)
グローバルCOE より新たに、複合分野による国際共同研究をおこなっている。具体的には「日中欧の舞台構造の比較研究プロジェクト」を昨年度より継続し、チェコおよび中国を主な対象に、専門家を招聘して集中講座を開催し、現地の研究集会に参加した。また「日英近松劇上演プロジェクト」では、全編英語で近松劇を上演し、関連シンポジウムを開催した。能楽研究としては、能楽学会の大会企画を共催し、加賀藩の能楽史研究を昨年度より継続した。活動詳細は以下の通りである。

● 日中欧の舞台構造の比較研究プロジェクト
西洋演劇コースや東洋演劇コースなどと連携して、舞台構造に関する国際共同研究を推進している。昨年度に引き続き、チェコおよび中国との研究交流事業をおこなった。

○ チェコプロジェクト
1. 1 集中講座「ヨーロッパバロック演劇舞台・劇場構造に関する研究会」
日時:2008 年11 月25 日(火)~ 27 日(木) 15:00 ~ 18:00(25、27 日)、15:30 ~ 18:30(26 日)
会場:大隈タワー地下多目的講義室、302 会議室
講師:パヴェル・スラフコ(チェスキー・クルムロフ城博物館館長)
内容 :ヨーロッパバロック演劇舞台の形成とその構造的特色について、現存する数少ない舞台を擁するチェスキー・クルムロフ城博物館館長パヴェル・スラフコ氏が講義した。チェスキー・クルムロフの城内劇場には、近代以前の日本の劇場との類似点が数多く見いだせることから、各回、日本の劇場構造について専門家がコメントを加え、日中の古典演劇舞台との比較もおこなった。各回の詳細は以下の通り。

25 日「チェスキー・クルムロフ城内劇場修復の20 年の考察」
 コメント: 賀古唯義(文化財建造物修理上級主任技術者)
      「熊本県八千代座の修復」
26 日「 17、18 世紀の劇場照明:ろうそく芯による照明の実験、バロック時代のイルミネーション考察」
 コメント: 古井戸秀夫(GCOE 客員教授・東京大学教授)
      「近代以前の歌舞伎の照明」
27 日「 マシネリ―:チェスキー・クルムロフ城内劇場のバロック時代の技術、歴史的劇場における効果機材について」
 コメント:竹本幹夫「能舞台で舞台装置が発展しなかった理由」

○ 中国プロジェクト
1. 2  国際研究集会「東方戯劇與劇場国際学術検討会」への参加―舞台構造の国際比較研究の一環として―
日程:2008 年10 月19 日(日)20 日(月)
主催・会場:山西師範大学戯曲文物研究所

1. 3 集中講座「中国演劇研究者のための中国語講座」
日時:2008 年10 月27 日(月)~ 31 日(金)、11 月4 日(火)~ 6 日(木)
場所:国際会議場共同研究室6
講師:李墨(GCOE 客員講師)

1. 4 「中国古典演劇ワークショップ」
日時:2009 年1 月26 日~ 28 日 18:30 ~ 20:00
場所:国際会議場第2 会議室
講師:李墨(GCOE 客員講師)、張春祥(京劇俳優)

1. 5 日英近松劇上演プロジェクト
上演「湯浅版 今宮の心中」
日時:2008 年6 月5 日(木)19:00 ~ 20:30、6 日(金)14:00 ~ 15:30
会場:小野記念講堂
翻訳・演出:湯浅雅子(ハル大学特別名誉研究員)
出演:ハル大学演劇学科学生キャスト
内容:全編英語・全キャスト英国人俳優による近松劇上演。
関連シンポジウム「日本の近松から世界のCHIKAMATSU へ」
日時:6 日終演後 15:30 ~ 17:00
パネリスト:竹本幹夫、鳥越文蔵(早稲田大学名誉教授・元演劇博物館館長)、キース・ピーコック(ハル大学講師)、湯浅雅子(ハル大学特別名誉研究員)
内容 :「湯浅版 今宮の心中」の上演を受けて、近松劇の英訳と海外上演の歴史、現代語訳の諸問題、さらに英国における翻訳劇の上演史、近年のシェイクスピア劇の受容などを討論した。

1. 6 定例研究会「加賀藩研究会」
日程:2008 年4 月19 日(土) 発表者:青柳有利子(GCOE 研究員)
5 月31 日(土) 柳瀬千穂(GCOE 研究員)
7 月12 日(土) 佐藤和道(GCOE 研究員、演劇博物館助手)
8 月26 日(土) 青柳有利子
11 月8 日(土) 柳瀬千穂
12 月13 日(土) 青柳有利子、 柳瀬千穂
1 月31 日(土) ;柳瀬千穂
場所:6 号館演劇博物館応接室、他
内容 :加賀藩の能楽史研究の一環として、第五代藩主前田綱紀の小姓であった葛巻昌興の日記の通読をおこなった。

1. 7  能楽学会第8 回大会にて大会企画「世阿弥発見百年―吉田東伍の人と学問―」を共催
日程:2009 年3 月21 日(土)
場所:井深大記念ホール
内容 :2009 年は、歴史学者・吉田東伍が世阿弥能楽論を「発見」し、『世阿弥十六部集』(明治42 年)を刊行してから百年という節目の年である。グローバルCOE では能楽学会と共催で関連企画を開催した。ここでは竹本幹夫が、吉田文庫から発見された『三道』の影写本(原本は関東大震災で焼失)について講演。影写本にある吉田東伍の書き入れによって、『世阿弥十六部集』の校訂態度の問題点が明らかになると指摘した。これは、日本演劇研究コースにおいて、新潟の吉田文庫で実施してきた吉田東伍遺筆の調査・整理の成果に基づくものである。他に、表章氏の世阿弥能楽論研究史について、千田稔氏の吉田東伍の人生と業績についての講演があった。

1. 8 研究員への研究指導(竹本幹夫)
日時:木曜5 限

2 人形浄瑠璃文楽(内山美樹子)
人形浄瑠璃文楽コースでは、21 世紀COE に引き続き、伝承が途絶えている浄瑠璃の復曲に取り組んでいる。さらに「文楽と映像」および「人形」という観点から、文楽という芸能を考察している。本年度は、多数の研究員と客員講師が参加する定例研究会を昨年度に引き続き開催した。また、文楽の太夫と人形遣いを講師に迎えて特別研究会を開催し、プロジェクトの基本テーマである「芸の伝承」の研究を重ねた。2008 年度の活動詳細は以下の通りである。

2. 1 定例研究会「人形浄瑠璃文楽研究会」
日時:毎月第四火曜、19:00 ~ 22:00
場所:33-2 号館演劇映像第2 専修室
第6 回 2008 年4 月22 日(火)
(1)特別研究会「文楽の人形―立役編」をめぐって
  ・人形の構造と演技について
  ・人形遣いの修行について
  ・人形遣いの芸の伝承について
(2)文楽と映像(5)
  ・大正~昭和期の人形遣いについて
  ・映像の中に残る演技について
第7 回 2008 年5 月27 日(火)
(1)人形浄瑠璃文楽の上演形態について
  ・「通し」の意義
  ・「新作」の意味
  ・「新作」における作曲の立場
(2)文楽と映像(6)
  ・大正~昭和期の劇場について
  ・映像の中に残る演技について
第8 回 2008 年6 月24 日(火)
(1)文楽と映像(7)
  ・映像の中に残る演技について(続)
  ・外国で制作された映像について
(2)大正末~昭和初の文楽興行と劇場について
第9 回 2008 年7 月22 日(火)
越前風の伝承(1)
  ・10 世豊竹若大夫の「和田合戦女舞鶴」
  ・「和田合戦女舞鶴」と作者並木宗輔
第10 回 2008 年9 月30 日(火)
越前風の伝承(2)
  ・文楽の「和田合戦女舞鶴」
  ・「和田合戦女舞鶴」の典拠の問題
第11 回 2008 年10 月28 日(火)
(1)演劇博物館開館80 周年
(2)文楽と映像―「忘れえぬ慕情」(1956 年)
(3)越前風の伝承(3)
  ・歌舞伎と文楽の「和田合戦女舞鶴」
第12 回 2008 年11 月25 日(火)
(1) 三代吉田玉造の忠信―三宅周太郎『文楽の研究』(1930 年刊)と『LE THEATRE JAPONAIS』(1925 年刊)
(2)越前風の伝承(4)
  ・「苅萱桑門筑紫」守宮酒の段、曲風と現行台本
第13 回 2008 年12 月16 日(火)
   「一谷嫩軍記」熊谷陣屋の段― 10 世豊竹若大夫最晩年の奏演をめぐって
第14 回2009 年1 月27 日(火)
(1)越前風の伝承(5)
  ・豊竹若大夫の「和田合戦女舞鶴」放送録音
  ・二代鶴澤清八の弾き語りで聞く「和田合戦女舞鶴」
(2)四代鶴澤綱造の芸
第15 回2009 年3 月24 日(火)
(1)文楽人形遣いの稽古(修行)
(2)「和田合戦女舞鶴」の読みと再評価
(3)昭和45 年5 月「菅原伝授手習鑑」全通しをめぐって

2. 2 特別研究会「文楽の人形―女方編」
日時:2009 年2 月3 日(火) 15:00 ~ 17:00
場所:6 号館318 号室
講師:桐竹紋寿氏
内容:
・生い立ちと師匠 桐竹紋十郎のこと
・女方人形の基本
・女方人形における足遣いの役割
・女方人形における左遣いの役割
・主遣いからの合図について
・女方人形のかしらと目線

2. 3 特別研究会「「越前風」の伝承について」
日時:2009 年2 月24 日(火) 13:00 ~ 15:00
場所:39 号館第5 会議室
講師:豊竹英大夫
内容:「『和田合戦女舞鶴』を聞く2」
・「和田合戦女舞鶴」市若初陣の段の解釈
・「和田合戦女舞鶴」市若初陣の段の構成とポイント
・浄瑠璃の文章と語りについて
・「詞」におけるカワリの技巧について
・太夫と三味線の関係

2. 4 研究員への研究指導(内山美樹子)
日時:火曜6 限


3 近世演劇および民俗芸能(和田修)
21 世紀COE では「アーカイブ構築研究(演劇)コース」でおこなっていた、民俗芸能の調査・記録を継続している。近世演劇研究と民俗芸能研究との統合的研究として、本年度は深瀬でくまわしの調査と記録をおこなった。

3. 1 深瀬でくまわしの調査・記録
日程:2009 年2 月22 日(日)
場所:石川県白山市深瀬でくまわし保存会館

4 日独比較演劇(ギュンター・ツォーベル)
当プロジェクトでは、日独の民俗行事や演劇環境の比較をおこなった。2008年度の活動は以下の通り。
4. 1 講演会「ヒロシマ被爆者の劇『傷だらけの手』を演出して」
講師:ペーター・クーナート(デッサウ劇場ドラマトゥルク兼演出家)
日時:2008 年10 月7 日(火) 18:00 ~ 19:30
場所:大隈記念タワー302 会議室
内容 :日本の戯曲「傷だらけの手」(脚本:藤原健夫)を演出し、ドイツと日本で上演したクーナート氏が、作品および演出について講演した。

5 その他
5. 1 研究員への研究指導(近世演劇:古井戸秀夫)
日時:金曜5 限
場所:東京大学

5. 2 留学生のための古典ゼミ
日程:2008 年4 月30 日(水)、5 月14 日(水)、5 月28 日(水)、5 月31 日(土)、6 月11 日(水)、7 月2 日(水)、7 月16 日(水)、10 月1 日(水)10月22 日(水)、11 月5 日(水)、11 月16 日(水)、11 月26 日(水)、2009 年1月28 日(水)、2 月18 日(水)
会場:国際会議場共同研究室2、ほか
講師:平林一成(GCOE 客員講師)
内容 :日本演劇を専攻する博士課程の留学生を主たる対象とした、日本古典文学読解のゼミ。

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