2011年度活動報告
Ⅰ.概要
西洋演劇研究コースでは、多角的な視点から西洋演劇を考察し、研究生の博士論文執筆を支援するとともに、国内はもとより海外での学会発表や国際的な学術誌への論文投稿を促進し、日本の西洋演劇研究に寄与し、国際的に活躍し得る演劇研究者の育成を図ってきた。これらの目的達成のため、事業推進担当者が推進する各研究プロジェクトでは英語ゼミを設置したり、演劇論講座を行なうなど、多彩なテーマに沿った研究活動および研究生の指導を行っている。西洋コースでは9つの個別プロジェクトを設置し、GCOE研究生は各プロジェクトに参加し、担当教員の指導を受けながら、博士論文の執筆を進めてきた。該当するプロジェクトがないGCOE研究生には、コース全体企画に参加してもらうほか、事業推進担当者である教員が個別に指導するという形をとった。
■担当者
<GCOE事業推進担当者> 〈五十音順〉
秋葉裕一(早稲田大学理工学術院教授)
岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授)
小田島恒志(早稲田大学文学学術院教授)
貝澤哉(早稲田大学文学学術院教授)
坂内太(早稲田大学文学学術院准教授)
澤田敬司(早稲田大学法学学術院教授)
藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院教授)
冬木ひろみ(早稲田大学文学学術院教授)
丸本隆(早稲田大学法学学術院教授)
三神弘子(早稲田大学国際教養学術院教授)
水谷八也(早稲田大学文学学術院教授)
本山哲人(早稲田大学法学学術院准教授)
八木斉子(早稲田大学政治経済学術院教授)
<専任研究協力者>
デュスッド、オディール(早稲田大学文学学術院教授)
<研究助手>
菊地浩平 (早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究助手)
奥香織 (早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究助手)
Ⅱ.コース全体としての活動
■GCOE英語ゼミ
講座担当:ブリティッシュ・カウンシル
日時:6月16日~8月4日の毎週木曜 、18:30~20:00
場所:早稲田キャンパス6号館レクチャールーム
ブリティッシュ・カウンシルに連続講座を依頼し、8月に大阪大学で開催された国際演劇学会での発表者を中心に口頭発表に必要なスキルの練成を行なった。国際学会での発表にはスピーキング、リスニング、ライティングと複合的な英語力が必要となるため、今後の研究活動のために必須の英語運用力を身につけ、国際的な舞台での活躍の準備をすることがかなった。目的のはっきりした整理された講義と、ユーモアを交えた会話によって、英語の苦手な受講生にも参加しやすいゼミとなった。
Ⅲ.各プロジェクトの活動(担当者五十音順)
【比較演劇研究】(秋葉裕一)
事業推進担当者である秋葉は、2011年5月にトリーア大学の「日本週間」に招かれ、ブレヒトや井上ひさしを取り上げて、『日独における過去の克服』と題する講演を行った。日独交流150周年記念の催しの一環である。トリーア大学教授陣と岡田利規など日本の現代演劇をテーマに研究交流ができた。ついで8月から9月にかけては、ベルリンのブレヒト資料館や芸術アカデミー、森鴎外記念館を訪問し、ブレヒト、梅蘭芳、ハイナー・ミュラー関連の資料を収集した。エルヴァンゲン・ショプフハイムでは、クライストやブレヒトの関連資料を収集することができた。GCOE研究生の研究支援を目的とする連携研究先の視察を兼ねた出張であった。
GCOE最終年度を迎えて、海外の研究者との研究交流が根付いてきたことを実感している。これが成果の海外発信につながり、日本語以外での発表の機会が増えてきた。J・クノプフ/J・ルケージーといったブレヒト研究者との連携、H=T.レーマン/E・フィッシャー=リヒテといった演劇理論研究者との共同作業、S・ショルツ=チョンカ/A.レーゲルスベルガー/E.グロスマンといった日本演劇研究者との意見交換。こうしたドイツ語圏を中心とした交流の積み重ねに加え、2012年1月の国際シンポジウムのおかげで、陳世雄/鄒元江といった中国のブレヒト研究者との間にも新たな協力関係が生まれている。日独比較演劇のさらなるグローバルな展開が期待できる。
【ベケット・ゼミ】(岡室美奈子)
ベケット・ゼミは、21世紀COEからグローバルCOEを通じて数多くの研究者を招聘してセミナーや講演会を開催し、さらに多くの研究生を国際学会に送り出してきた。そうした活動をとおして、メンバーの多くは、国際的に通用する実力をつけてきたといえる。10年間の活動の集大成として、2012年3月にGCOE拠点経費からの助成を受けて、GCOE研究生および研究協力者を中心とする、若手研究者によるベケット論集『サミュエル・ベケット!――これからの批評』(岡室美奈子、川島健、長島確編、水声社)を刊行した。月例研究発表会、草稿検討会、および編者による査読と書き直しを重ね、充実した論集になったと自負している。メンバーたちが、これをスタート地点として、これからのベケット研究を牽引する存在となってくれることを願っている。
【現代文学の演劇化をめぐる総合的研究】(貝澤哉)
昨年度に引き続くかたちで、ご本人と著作権者の協力のもと「川村毅/見沢知廉」の書簡類の翻刻を進め、対象資料の再テクスト化がほぼ完了した。今後、考察と同時に、資料の学術的紹介も予定している。
【西洋演劇身体表象研究】(坂内太)
西洋演劇、及び戯曲調のテクストにおける身体表象の研究を推進した。また、身体表象研究会を定期的に開催し、GCOE研究生や研究助手によってモダニズムにおける西洋の人形劇を巡る研究発表などがなされた。また昨年度に引き続き参加者全員によって、人間の身体と人形・機械とが対置される様々な戯曲や映像作品についての分析や検証が行なわれた。
【ポストコロニアル演劇研究】(澤田敬司)
ポストコロニアル状況の中から生まれた演劇、ダンス・パフォーマンスについて研究を推進した。まず、オーストラリア学会との共催により、オーストラリアの戯曲『ミス・タナカ』(ジョン・ロメリル作)をリーディングによって本邦初訳・初演し、作者ロメリル氏を招聘して研究者とのシンポジウムを開催できた。この試みにより、江戸あやつり人形劇団・結城座による『ミス・タナカ』の国際的な公演(2012年9月 東京芸術劇場)が実現することとなり、GCOEの研究成果が演劇実践に直接結びつくという、実りあるイベントとなった。また、本プロジェクトが横浜能楽堂と連携しながらこれまで連続して行ってきたアイヌとカナダ先住民によるダンス・ワークショップの総決算として、アイヌとカナダ先住民ダンス・パフォーマンス公演『ススリウカ』の記録映画の上映会とシンポジウムを開催した。この一連の研究の成果は、日本カナダ学会でも報告され、我が国では未開拓な分野である先住民パフォーマンス研究の突端を開くことが出来た。
日時:2011年6月11日(土) 15:00~18:00
題目:John Romeril作『ミス・タナカ』リーディング上演
場所:早稲田キャンパス26号館地下多目的講義室
上演:楽天団
ポストコロニアル演劇研究会では、その主たる活動のひとつとしてオーストラリア演劇の紹介を行なってきた。今回、『ミス・タナカ』リーディング上演によって、日本では代表作である『フローティング・ワールド』以外には未だ積極的に紹介されているとは言いがたいジョン・ロメリル(John Romeril)作品の魅力を広く紹介することが出来た。今日のオーストラリア舞台芸術を語る上で最も重要な作家のひとりであるロメリル作品を、演劇企画集団・楽天団の全面協力の下披露することがかない、非常に貴重な機会となった。
日時:2012年2月4日(土) 15:00~17:00
題目:映像で追うススリウカ
場所:26号館(大隈記念タワー)地下多目的講義室
講師:石井達朗(舞踊評論家)、中村雅之(横浜能楽堂副館長)、佐和田敬司(GCOE事業推進担当者)
横浜能楽堂の企画で初演されたダンス『Susuriwka (ススリウカ) -willow bridge』、及び当作品の制作過程を追った映像『A Battle on the Bridge -The Creation of Susuriwka』の上映を行なった。上映後の鼎談では本プロジェクト事業推進担当者の澤田と、横浜能楽堂副館長の中村雅之氏、慶応義塾大学名誉教授の石井達郎氏で、先住民による伝統の再創造と真正性をめぐる諸問題、舞台芸術としての先住民の文化を我々はどう鑑賞するのかなど、海外での動向との比較も含め考察が行なわれた。
【フランス語圏舞台芸術研究プロジェクト】(藤井慎太郎)
2011年度前期は、フランス語で書かれたテクストを読むゼミを毎週月曜日に開催した(戸山キャンパス33-2号館2階第2会議室)。フランス語の能力を高めること、演劇理論に関する知識を深めることを目的とし、Joseph Danan, Qu'est-ce que la dramaturgie ?, Actes-Sud - Papiers, 2010(ジョゼフ・ダナン『ドラマトゥルギーとは何か』)の翻訳を試みた。また、下記のレクチャーを開催した。
日時:6月13日(月)18:00~21:00
場所:早稲田キャンパス26号館地下多目的講義室
題目:「ドキュメンタリー演劇 その起源から現在まで」
講師:ダヴィッド・レスコ(パリ・ウェスト・ナンテール大学准教授)
すでに10本を超える戯曲の作家であり、俳優・演出家・音楽家でもあるレスコ氏に、ドキュメンタリー演劇についてお話し頂いた。その起源とされる1920年代のピスカートアの仕事、60年代のペーター・ヴァイスの理論、さらにはイギリスやイタリアにおける実践の例が紹介され、現代演劇の諸相を再検討する有意義な場となった。
オープン・イベント エゴヤン+カンジャン
日時:2011年10月15日(土) 14:00~20:40
場所:早稲田キャンパス26号館地下多目的講義室
Citadel, Next of Kin, Speaking Parts上映後(協力:特定非営利活動法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭)、映像作家で映画監督のアトム・エゴヤン氏と女優アルシネ・カンジャン氏によるティーチ・イン(逐語通訳付き)を開催した。
イザベル・ロネ(パリ第8大学教授)による舞踊をめぐる3つのレクチャー
現代舞踊研究の第一人者であるロネ教授をお招きし、舞踊研究コースとの共催で、「舞踊 記憶 (再)引用 想起」という共通テーマのもと、ダンスをめぐる連続講演会を開催した。
1. 2011年11月7日(月)18:30~21:00、26号館302
「ダンスの「作品」とは—ニジンスキー振付『牧神の午後』、あるいは舞踊作品の影響圏をめぐって」
2. 2011年11月9日(水)13:00~15:30、26号館302
「自伝に見るダンサーの形象—イザドラ・ダンカンとモーリス・ベジャールの場合」
3. 2011年11月11日(金) 18:30~21:00、26号館地下多目的講義室
「ジェローム・ベルにおける「引用」の作業」
クリスティアン・ビエ教授講演会(パリ・ウエスト・ナンテール大学)
演劇史・演劇美学を専門とされ、拠点主催の国際シンポジウ「ACTING」での講演を機に来日されたビエ教授による講演会を別途開催した。
1. 2012年1月25日(水) 18:30~20:30、26号館302(西洋演劇論講座)
「エリザベス朝時代の演劇について――イギリスとフランスの関係を中心に」
2. 2012年1月30日(月) 18:00~21:00、26号館302
「演劇と政治:介入の様態とインパ クトの追求『ルワンダ94』の場合」
【シェイクスピア・ゼミ】(冬木ひろみ・本山哲人)
シェイクスピア・ゼミでは、シェイクスピア、および同時代の劇作家について、最先端の現代批評と緻密なテクスト解釈の両面からアプローチをし、シェイクスピア研究の水準を高める場としている。本ゼミが掲げる目標は、テクスト論と上演論をつなぐ最も有効な方法論を模索しつつ、立体的な演劇の場の中でテクスト分析を行ってゆくことである。2011年度は、国内外で顕著な活動をしている研究者を招聘したセミナー、研究生たちによる自身の研究の発表などを随時行なった。特に、世界的に著名なBevington教授による2回の講演は、シェイクスピア・ゼミの最後を飾るにふさわしい内容で、研究生に国際的レヴェルでのさらなる研究の進展を促すものとなった。
日時:2011年11月12日
題目:コンテンポラリ・シェイクスピア--今、ここで、東北の私たちが
場所:26号館(大隈記念タワー)3階302会議室
講師:下館 和巳氏(東北学院大学 教養学部教授)
本講演会では、シェイクスピア研究でも第一人者であり、自分の劇団を率いて東北弁によるシェイクスピア劇を上演し続けている下館氏を招聘することで、机上だけではない、舞台上の生きた台詞の理論について拝聴でき、また議論も深めることが出来た。言葉の壁と民族の固有性にも触れる講義を通じて、研究生も大きな刺激と思考の広がりを得ることがかなった。
日時:2011年11月12日(土) 13:00~15:00
題目:Community-Based Theatre in the United States and the United Kingdom
場所:早稲田キャンパス26号館(大隈記念タワー)3階302会議室
講師:Yuko KURAHASHI(倉橋 祐子氏)(Kent State University, Associate Professor)
演劇のプロと地域共同体との対話は、演劇研究においてこの15年ほどで重要なものとなってきているが、まだ十分に検証がなされているとはいえない。そこで、本講演会では当分野の専門家である倉橋氏によって、アメリカとイギリスの地域を基盤とした演劇がどのように行われているのかが、具体的な例や映像とともに紹介された。
日時:2011年11月23日(水) 15:30~17:30
題目:Hamlet Onstage in the Late 18th and Early 19th Centuries
場所:早稲田キャンパス26号館(大隈記念タワー)3階302会議室
講師:David Bevington氏(シカゴ大学 名誉教授)
これまでシェイクスピア・ゼミでは、様々な視点から「テクストと上演」の関わりを探ってきたが、翻案劇やテクストの書き換えが盛んに行われ、シェイクスピア劇が頻繁に上演されていた18世紀から19世紀にかけて検討する機会がなかった。そこで、今回の講演は、上記の時代に焦点を絞り「テクストと上演」の問題が時代背景によって変容するという、これまでシェイクスピア・ゼミでは扱われてこなかった視点を得ることが出来た。質疑応答の時間にも活発な議論が交わされ有意義な講演会となった
日時:2011年11月26日(土) 15:30~17:30
題目:Shakespeare and Religion
場所:早稲田キャンパス9号館5階第1会議室
講師:David Bevington氏(シカゴ大学 名誉教授)
シェイクスピア作品は様々な形で宗教的な要素が使われており、そのために作品と宗教問題を絡めて議論されることがしばしばある。今回の講演は、16世紀の芝居と言葉を通して行われていた宗教論争がどのようなかかわりを持つのかということを取り上げ、これまでにない広い視野から、シェイクスピア・ゼミの中心的課題であるテクストもしくは言葉と上演の関係性についての考察がなされた。Bevington氏は2011年7月に『ハムレット』に関する著書を発表したばかりであることもあり、質疑応答においても、世界的に著名な研究者の最新の研究の話を直接伺うことができる、非常に貴重な機会を得ることが出来た。
【オペラ/音楽劇の総合的研究】(丸本隆)
本プロジェクトは、演劇学・音楽学をはじめとする学術諸分野の学際的アプローチを通じたオペラ/音楽劇の総合的研究を目指して、21世紀COE以来、多用な活動を展開してきた。2011年度は、研究生の発表や招聘講師の講演を中心に、下記の研究会を開催した。また、本プロジェクト所属の研究生が国際演劇学会で発表を行った。
日時:2011年5月14日(土) 15:00~19:00
場所:早稲田キャンパス8号館305教室
題目:「ハンガリー王立歌劇場と「ナショナル・オペラ」について」
The Royal Hungarian Opera House and “National Opera” at the Turn of the Century
発表者:岡本佳子(東京大学大学院博士課程、GCOE研究生)
主にハンガリーにおけるオペラ史の概観と19世紀末に開場した王立歌劇場(現ハンガリー国立歌劇場)のレパートリー分析が報告され、音楽家の具体例とともに、ハンガリーにおいて「ナショナル・オペラ」が国籍、言語の問題と密接にかかわりながら複雑な様相を見せていることが明らかにされた。発表は英語、補足説明や議論は日本語を交えて行われた。また、研究発表の他に、オペラ・音楽劇研究の今後を考える場が設けられ、活発な議論が行われた。
日時:2011年7月2日(土)15:00~
場所:早稲田キャンパス8号館219
発表1. 発表者:平井李枝(ピアニスト・ソプラノ、GCOE研究生)
題目:「エンリケ・グラナドス―オペラ作品とカタロニア音楽界への貢献―」
発表2. 発表者:長谷川悦朗(早稲田大学・国立音楽大学他非常勤講師、GCOE研究協力者)
題目:「舞台上の光と闇―ロルツィングのオペラ《密猟者》について―」
発表1では、グラナドスのオペラ《ゴイェスカス》の完成に至るまでの道のりが、彼がカタロニアで行った音楽活動と関連付けて考察された。発表2では、ロルツィングの喜劇オペラ《密猟者》(1842年初演)の「ビリヤード場面」に光が当てられ、この場面には筋進行全体が集約されていることを明らかにされたとともに、光と闇の交錯には劇場照明の歴史的展開における画期的転換が関係していた可能性が指摘された。
日時:2011年8月6(土)16:00-17:30
場所:早稲田キャンパス26号館302会議室
発表者:中村仁(桜美林大学ほか非常勤講師、GCOE研究生)
題目:「「ゾッとするほどモダンな」オペラ-ヒンデミット《今日のニュース》における自己言及的な構造についての考察」
ヒンデミットの3幕オペラ《今日のニュース》について、上演に接したヒトラーを激怒させた「風呂場のアリア」をはじめ、いくつかの場面を分析しながら、この作品のドラマ、音楽における様々な次元での自己言及的・再帰的な構造とその意義が明らかにされた。
日時:2011年10月8日(土)15:00~18:00
会場:早稲田キャンパス8号館219
題目:「日本と音楽劇――日本に於ける'歌劇'の受容とその研究の動向」
発表者(発表順):森佳子(日本大学非常勤講師、GCOE研究生)
佐藤英(早稲田大学非常勤講師、GCOE研究生)
伊藤由紀(東京大学博士課程、GCOE研究生)
司会:山梨牧子(早稲田大学非常勤講師)
8月7日~12日に大阪大学で開催された国際演劇学会で研究会のメンバーが団体パネルおよび個人パネルで研究発表を行い、10月の研究会では、団体パネル「Japan and Music Theatre」で発表を行ったメンバーによる学会報告が行われた。
日時:2011年11月19日(土)16:00~18:00
場所:早稲田キャンパス7号館ファカルティラウンジ・ミーティングルーム
発表者: 山口康昭(新潟医療福祉大学・専任講師)
題目:「人はどのように歌い,踊り,演技するのか?~人体解剖学から観る舞台・身体表象から考える舞台~」
演技や発声のメカニズムが、解剖学の見地から、具体的な分析とともに明らかにされた。
日時:2011年12月24日(土)13:00~15:00
場所:早稲田大学小野記念講堂
発表者: 平井李枝(ピアニスト・ソプラノ、GCOE研究生)
題目:「グラナドス作曲《ゴイェスカス》とゴヤの絵画~オペラの原曲であるピアノ曲集《ゴイェスカス》から読み解く「ゴヤ」の世界(ピアノ演奏による解説付き)~」
グラナドスがゴヤの絵画の世界観を音楽でどのように表現しているのか、その作曲技法や物語性などについてピアノ演奏を交えながら検証された。
日時:2012年1月21日(土)14:00~18:00
場所:早稲田キャンパス6号館318
テーマ:「1920・30年代ドイツにおけるオペラ創作と映画的発想」(シンポジウム形式)
発表者と題目:白井史人(GCOE研究生)「映画化という“上演”――ヴァーグナーとシェーンベルク」、中村仁(GCOE研究生)「パントマイム/サイレント映画/オペラ-1920年代のヒンデミット、ヴァイルのオペラ作品における舞台と音楽」、広瀬大介(国立音楽大学講師)「1920年代のリヒャルト・シュトラウスにおけるオペラと映画:「ばらの騎士」映画版と「インテルメッツォ」」
1920、30年代のドイツ語圏で活躍したオペラ作曲家たちに光を当て、その作品の創作/上演において「映画的」発想が持っている意義が検討された。
日時:2012年2月25日(土)16:00~18:00
場所:早稲田キャンパス6号館318
講師:米谷毅彦(歌手・聖徳大学大学院講師)
題目:「Classic音楽が意味する"Class"、その階級意識…東洋人として、欧州の舞台に立った日々より」
オペラ歌手としての活動と経験について、歌や音楽を交えながらお話し頂いた。
また、11月8日と12月20日に、オペラ・音楽劇研究の現状をめぐって議論する研究会を開催した。
【アイルランド演劇研究会】(三神弘子)
アイルランド演劇研究会では、アビーシアター設立以降、現代に至るまでのアイルランド演劇の伝統を概観しながら、社会的、歴史的、政治的コンテクストを検討し、21世紀の視点で、ナショナル・アイデンティティの問題、ポスト・コロニアリズム、演劇における女性の表象、ケルティック・タイガー以降のアイルランド演劇といった視点で考察を行なっている。2011年度以降は上記のテーマにくわえ、“Irish Theatre and Its Soundscape”と題したプロジェクトが進行中である。2012年度は、4回研究会を実施し、4月16日、「Patrick Galvin: We Do It For Love (1975), Stewart Parker: Spokesong (1975)にみられる歌と音」(三神弘子)、6月19日「ブライアン・フリールのPerfomancesとヤナーチェクの弦楽四重奏曲第2番『ないしょの手紙』(磯部哲也)、10月29日「キルロイとマクギネスの歴史劇: Double CrossとDolly West's Kitchen」(三神弘子)、12月23日「Owen McCaffertyのMojo Mickyboと北アイルランドの演劇」(舟橋美香)がそれぞれ研究報告を行った。
【17世紀フランス演劇研究会】(オディール・デュスッド)
2011年度は、下記の研究会・講演会を開催した。また、11月に日本演劇研究コースとの共催で国際シンポジウム「16~18世紀演劇の諸問題」を開催した。
日時:5月21日(土)15:00~17:00
場所:早稲田大学国際会議場共同研究室7
題目:「エレーヌ・シクスーによる演劇のためのエクリチュールの試み — 太陽劇団との協働作業の現場から」
講師:稲村真実(立教大学等非常勤講師)
1998年6月にスリジー・ラ・サルで行われたシクスーに関するシンポジウムから、主としてシクスーとアリアーヌ・ムヌーシュキンの対談がとりあげられ、80年代から始まる太陽劇団との協働作業をとおして発見された、テクストと演劇(戯曲)のエクリチュールの位相の違いが登場人物、時間性などから考察された。
日時:6月18 日(土)15:00~17:00
場所:早稲田大学オディール・デュスッド研究室
発表者: 西村光弘(GCOE研究生)
題目:「クロード・ペロー『古代人の音楽について』」
科学者クロード・ペローは多声音楽がもっとも美しい音楽であると主張したことから、当時隆盛していたオペラが多声音楽ではないという理由で評価されないこととなり、文学における近代派と齟齬をきたすことになる。本研究会では、17世紀の演劇、特にオペラの要素として重要な音楽に関する論および論争を、特にペローの論を中心に検討した。
日時:7月16 日(土)15:00~17:00
場所:戸山キャンパス31号館、演習室01
発表者:榎本恵子(GCOE研究生)
題目:「16-17世紀フランスにおけるプラウトゥスとテレンティウスの受容」
17世紀フランスの作家にはラテン作家の影響が色濃くみられ、翻訳や教育の問題もまた17世紀フランス演劇と密接な関係にある。本研究会では16-17世紀フランスにおけるプラウトゥスとテレンティウスの受容が、劇だけに限らず、翻訳論、教育論の視点からも考察された。
日時:8月6日(土)15:00~17:00
場所:早稲田大学オディール・デュスッド研究室
発表者:野池恵子(GCOE研究協力者・早稲田大学非常勤講師)
題目:「フランス17世紀悲劇における夢の舞台化」
夢の舞台化は17世紀フランス演劇研究において重要なテーマの一つである。17世紀初頭には、夢の中の亡霊が実際に舞台に登場したが、30年代に入ると夢の内容を語りで表すにようになる。本研究会では、17世紀フランスの悲劇における夢の舞台化に関して、特に年代による手法と受容の違いに注目して比較・検討を行った。
日時:2011年10月15日(土) 15:00~17:00
場所:早稲田キャンパス6号館318
講師:秋山伸子(青山学院大学教授)
題目:「モリエールのコメディー=バレエ『町人貴族』について」
この作品それ自体が、宮廷バレエの様相を呈していること、この作品において音楽やダンスが果たす役割について検討された。
日時:2012年1月21日(土) 15:00~17:00
場所:早稲田大学オディール・デュスッド研究室
発表者:クリストフ・パジェス(早稲田大学非常勤講師)
題目:「17世紀におけるオペラ台本」
17世紀においてオペラは、作曲者というよりむしろ作家のものであったことが示され、台本がオペラの隆盛に重要な役割を果たしていたことが指摘された。貴族の日常生活にオペラがいかに浸透していたかが、小規模なオペラの私的な上演など、エピソードの紹介とともに明らかにされた。
日時:2012年2月25日(土) 15:00~18:00
場所:早稲田大学オディール・デュスッド研究室
発表者:皆吉郷平(慶応大学非常勤講師、GCOE研究協力者)
題目:片木智年「コケットリーの鏡、もしくは17世紀風俗喜劇」をめぐって
コケットリーについての片木論文が紹介された。17世紀においてコケットという語が誕生し、そのうち社会的なタイプとして認知され、その後キャラクター化され、さらに世紀末にはコケットリーを超越した新たな女性像が示されるようになったという、この論文の流れにそって、発表者が裏付けをおこなった。
日時:2012年3 月31日(土) 15:00~17:00
場所:早稲田大学オディール・デュスッド研究室
発表者:浅谷真弓(中央大学非常勤講師、GCOE研究協力者)
題目:「デュ・リエの『エステル』について」
「エステル」はラシーヌの宗教劇として知られているが、デュ・リエのこの悲喜劇は、宗教色は弱く、むしろ宮廷内の恋愛と権力争いに重点がおかれている。ユダヤ教を主題とするのは困難をともなったようで、パリでは不評。ルーアンやオランダで好評を得たということであった。作品の紹介のほかに、作家デュ・リエの人となりや生涯について明らかにされた。
国際シンポジウム「16~18世紀演劇の諸問題」(日本演劇研究コースとの共催)
日時:2011年11月25日(金)~27日(日)
場所:大隈記念講堂小講堂
日本演劇研究コースとの共催で、日本・東洋・西洋を通観する演劇の国際比較をテーマとした国際シンポジウムを開催した。一日目は「女優の誕生」、二日目は「劇場・舞台」、三日目は「信仰・教育と演劇」をテーマに、招聘講師による講演と若手研究者による研究発表が行われた。17世紀フランス演劇研究会からは、以下の講師・研究生が参加し、講演・発表を行った。
2011年11月25日(金)
講演:戸口民也(長崎外国語大学、GCOE研究協力者)、「フランス最初の女優たち」
講演:オディール・デュスッド(早稲田大学教授、GCOE研究協力者) ‘‘Les actrices dans la presse de langue française aux 17e et 18e siècles’’
2011年11月26日(土)
講演:橋本能(中央大学教授、GCOE研究協力者)、「コルネイユの仕掛け芝居『アンドロメード』とオペラの舞台機構」
講演:ミカエル・デプレ(上智大学准教授)、‘‘ « Vivre à communs despens » : contrats d’associations de comédiens et constitution des premières compagnies dramatiques, France-Italie (1540-1610). ’’
研究発表:西村光弘(GCOE研究生)、「新旧論争における音楽について――クロード・ペロー『古代人の音楽について』」
2011年11月27日(日)
講演:ブルーナ・フィリッピ(ペルージア大学教授)、‘‘Le théâtre des vertus : la pratique scénique jésuite entre pédagogie et religion (XVIIe siècle)’’
講演:萩原芳子(明治大学教授、GCOE研究協力者)、「ポール=ロワイヤルの教育とラシーヌ演劇」――1671年の『キリスト教および種々の詩選集』をめぐって」
研究発表:落合理恵子(GCOE研究生)、「バッチスタ・グァリーニの『忠実な牧人』(1590)における牧人劇と悲喜劇の融合」
研究発表:榎本恵子(GCOE研究生)、「学校教育とラテン古典喜劇――17世紀フランス イエズス会とポール・ロワイヤルの場合――」